穴倉

王様の耳はロバの耳、

四季

寒くなってきた。いよいよ、私の好きな季節の到来だ。

私の好きな季節は冬だ。冬しか好きでない。年中冬ならいいと思う。

四季に対するイメージが、あまり人と合わない。だから、雑誌の季節に関する特集に納得がいかない。他人と共有できるのは冬の良いところだけだ。冬を楽しもうとする特集は読んでいて楽しい。

私なりの四季はこうだ。

 

春。家から出ない。なぜなら花粉症がひどいため。植物という植物に腹が立つ。

部屋に閉じこもって本を読んだり、料理をしたりする。

窓辺でひなたぼっこをする。花見はテレビで済ませる。家からは出ない。

 

夏。花粉が勢力を失ったことが確認できたらそろそろと家から出る。暑い。

小学校のときに「なつやすみのとも」をやったことを思い出して勉強したくなる。

夏はレジャーだと騒ぐ人を腑に落ちない気持ちで眺める。街に出てはデパートの冷房の涼しさに喜びを感じる。海には行かない。あと半袖が嫌いなので長袖で汗をかく。

 

秋。極力家から出ない。なぜなら花粉症が発症するため。秋の花粉はのどに来る。

部屋に閉じこもって本を読んだり、映画を観たりする。

芸術の秋という言葉に乗せられて、アート的なものを追いかけたくなる。美術館などに行って、お金とマスクとティッシュを消費する。

 

冬。生きててよかったと感じる。わけもなく散歩をしたり、歌ったりする。

ストーブのにおいをかいで一日中上機嫌でいる。風呂に長く浸かる。クリスマスはカロリーを気にせず好きなものを食べる。年末は紅白を見てそばを食べる。

 

春から秋まで我慢を重ね、冬にたどり着いた時の感慨はひとしおだ。食べ物はおいしく、服を選ぶのも楽しい。かつてはもっと四季折々を楽しまねばと焦り、骨を折ったこともあったが、うまくいかなかった。つらい季節はそういうものだと割り切り、やがては必ず訪れる冬を楽しみにやりすごす。今はそれがベストだと感じる。

私にとって、四季の苦しみと喜びは3:1だ。これは、24時間のうち4分の3をがんばり、4分の1を睡眠にあてるのにも似ている。人生のバランスも、だいたいこんな感じだ。楽しいことは苦しいことより少ないからこそ、その輝きをいっそう増す。

 

だからこの、冬が始まるときのじんわり暖かい幸福感は、ベッドに入り心地よい眠気を味わっているようなものなのだ。これからしばらく私は、きたる3つの季節を乗り越えるべく充電をしなければならない。おいしいものを食べ、好きなところにでかけ、すばらしいものにふれる必要がある。充電とはいえ、忙しい身だ。今日もしっかり休んで、1年の充電期間であるところの冬、を充実させるための充電期間を充実させねば。おやすみなさい。